現代の生産者の中には、生産量の100%を安く、早く、非破壊的な方法で検査できる人たちがいます。そういった人たちは幸運です。しかしそうでない人たちにとっては、工程能力分析が非常に役に立ちます。例えば、測定が難しいワイン造りで考えてみてください。ワインのサンプルに過酸化水素を加えて化学的特性を測定した時点で、もうそのサンプルを売り物のボトルに戻すことはできません。必要な情報を素早く、できるだけ少ないサンプルから得られることは、大きな違いにつながります。
私たちは工程能力分析を用いて、ある工程のパフォーマンスが規格限界に対してどの程度かを評価します。一目で、測定値が規格の範囲内であれば工程のパフォーマンスは良好だと考えられるでしょう。工程能力分析は、このような単純な二要素のアプローチに優って、工程が規格をどの程度満たしているかについての洞察を提供します。pH値の測定値を示す以下のヒストグラムを考えてみましょう。完成品において、3.3から3.7の間が規格範囲内の値であるとします。
工程2では、測定値が規格限界の手前まで来ています。どちらの工程でも、すべての測定値は規格範囲内に収まっています。ヒストグラムは工程からのサンプルを示しているため、測定値が規格範囲外に及ぶ可能性は工程2の方がより懸念されます。工程能力分析では例のように工程1と工程2比較でき、どの部分を改善するのが最も効果的なのかが分かります。
能力については、さまざまな尺度が使われています。最も理解しやすいのはPpとPpkの2つです。
Ppは、規格限界と工程の推定範囲との差を比較する比率です。
推定範囲と規格限界の距離が一致する場合、Ppは1となります。
推定範囲が狭ければ狭いほど、工程能力が高いことを示し、Ppの値も高くなります。製品や工程によって基準は異なりますが、多くの場合1.33が基準になります。
工程が中心でない場合、Ppkは顧客に規格通りの製品を提供する工程能力をより正確に表すことができます。Ppkは規格限界との差ではなく、測定値の平均から近いほうの規格限界までの差を使用します。推定工程範囲の代わりに、Ppkは推定工程範囲の1/2を使用します。その結果、工程の平均が規格限界に対してどの位置にあるかが測定されます。
例えば、Pp値3.46は、測定値の半分以上が規格限界の範囲外であるにもかかわらず、工程のパフォーマンスが良好であることを示しています。Ppk値-0.02は、工程のパフォーマンスが低いことを示しています。工程のパフォーマンスが低いので、Ppkのほうが、改善すべき工程を示してくれる尺度と言えます。
工程改善について決定を下す際、たいていは製品のサンプルがすべて規格範囲内にあるということを知るだけでは不十分です。ある工程が顧客の規格を満たすのにどれだけ効果的であるかを説明する、より具体的な方法が必要です。どこに焦点を当てて改善努力をするべきかを知りたいなら、能力分析が必要です。