Matthew Barsalou、ゲストブロガー
釘が不足で、蹄鉄打てず
蹄鉄不足で、馬が走れず
馬が不足で、乗り手が乗れず
乗り手が不足で、戦に勝てず
戦に負けて、国をとられた
たった1本の釘のせい (Lowe、1980、50)
古い童謡「くぎがふそくで」によれば、馬の蹄鉄の釘が1本なかったために、王国が丸ごと失われました。「スターウォーズ」シリーズの「銀河帝国」でも同じことが言えます。初代デス・スターを製作した技術者が適切な故障モード影響解析 (FMEA) を実行していたら、帝国は没落しなかったでしょう。
「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」の反乱軍は、デス・スターの設計図を盗み、宇宙要塞丸ごとが破壊されることになる重大な弱点を見つけました。簡素な排熱孔は中央反応炉につながっていました。排熱孔で爆発が起これば、要塞丸ごとが連鎖反応で爆発するような作りでした。この弱点は認識されていたものの、弱点を突けるのは小さな宇宙戦闘機のみで、しかも排熱孔はターボレーザーとTIEファイターによって防御されていたため、大したことではないと考えられていました。防御は突破不可能と考えられていましたが、反乱軍の戦闘機Xウイングのグループは、この弱点を突破できることを証明しました。排熱孔にプロトン魚雷1対が打ち込まれると、連鎖反応が始まり、中央反応炉、そして要塞全体が崩壊しました (Lucas、1976)。
デス・スターにFMEAが必要な理由
デス・スターは、工学者ベヴェル・レメリスクがグランド・モフ・ウィルハフ・ターキンの指揮下で設計しました。ターキン・ドクトリンでは、帝国の人材100万人以上、TIEファイター7,000機以上、陸上車両11,000台以上を運ぶ重武装機動要塞が求められました (Smith、1991)。要塞は、外縁領域にあるホラズ星系の刑場惑星デスパイア周りの軌道に建設され、帝国の支配を目的としたターキン・ドクトリンの重要な要素でした。デス・スターの建設費は、現在の価格に換算すると85京米ドルです (Rayfield、2013)。
このような高額で資源を要するプロジェクトを、設計故障モード影響解析 (FMEA) なしで試行してはいけません。設計段階で適切に作成したFMEAを1つ使用するだけで、デス・スターを失わずに済んだでしょう。
銀河帝国の工学者らは、帝国の主力艦や宇宙要塞のシステムに冗長性をよく組み込んでいました。しかし残念ながら、デス・スターのシステムはすべて、個々のシステムに常時確実に電力を供給できるように中央反応炉につながっていました。この相互接続により、排熱孔は中央反応炉に直接つながることになったのです。
設計者らは、排熱孔で爆発が起これば中央反応炉に到達して要塞全体が崩壊する可能性があることを知っていましたが、ターボレーザー塔、小型宇宙戦闘機の侵入を防御しきれなかったシールド、TIEファイターなどの限定的な防御対策を過信し、排熱孔を防御できると考えていました (Smith、1991)。このような考え方は、けがや死亡を引き起こす可能性のある設計上の欠陥を探すこととは少し違いますが、いかなる悪いことも起こらないようにするために綿密な検査を重視するという考え方です。もしベヴェル・レメリスクがFMEAを作成していたら、この設計上の欠陥を無視することはなかったでしょう。
FMEAへの危険度優先順位数の割り当て
FMEAは鉛筆と紙があればできますが、工程と製品の卓越性を実現するビジュアルツールを搭載したMinitab WorkspaceにはFMEAフォームが組み込まれており、このフォームによって計算が自動化され、プロジェクトに必要になるであろうプロセスマップやその他のフォームと、データが共有されます。
FMEAでは、危険度優先順位数 (RPN) を使用して、是正措置を講じるべき時期を割り出します。RPNの範囲は1~1,000で、小さいほど良い数値となります。RPNは、影響度 (S) に発生度 (O) と検出度 (D) を掛けて計算されます。
RPN = S x O x D
影響度、発生度、検出度がそれぞれ評価され、1~10の順位数が割り当てられます。小さいほど良い数です。
故障モード影響解析 (FMEA) の例: デス・スターの排熱孔
デス・スターの排熱孔の場合、故障モードは排熱孔での爆発であり、結果として生じる影響は、中央反応炉に到達する連鎖反応になります。中央反応炉の爆発は要塞の喪失と要塞内のすべての人員の喪失に発展するため、影響度は10と評価されます。欠陥によるけがや死亡が発生するのを防ぐため、その発生度がどれほど低いとしても、影響度10と評価されれば再設計を検討する十分な理由になります。
デス・スターの潜在的な故障原因は、攻撃または妨害行為です。設計者は発生する可能性がないと考えていたため、発生度は3です。主な制御手段は、大型船からの攻撃に対してのみ有効なシールドでした。帝国はこの手段が有効であると信じていたため、検出度は4と評価されました。
RPNは、S × O × D = 10 × 3 × 4 = 120になります。RPN 120は、処置を講じるのに十分な理由になりますが、RPNの数字がもっと小さかったとしても、影響度が高いために是正処置が必要です。そもそもデス・スターのRPNは低すぎる可能性があります。帝国は現在の制御を過信しているからです。是正処置が必要なのは明らかです。
是正処置は、設計の早い段階で講じる方が簡単でコストも安くなります。組み立て開始前に問題が検出できれば、特にそうです。デス・スターのオリジナルの設計図は、建設が始まる前にちょっとした努力で修正できたはずです。シールドを改善して侵入を防御できたでしょう。もっと重要なこととして、システム間の相互接続を分断することにより、排熱孔の爆発といった1つのシステムの故障が、デス・スター全体を破壊するような事態にまで発展するのことがないようにできたでしょう。是正処置を実施および検証した後は、RPNを再評価する必要があります。新しいデス・スターのRPNは5 × 3 × 2 = 30になったことでしょう。
当然ですが、FMEAを実施することは単に紙面上でより小さい数字を獲得するよりはるかに重要なことを意味しています。このステップを踏んでさえいれば、帝国はターキン・ドクトリンを継続できたでしょうし、宇宙は今日とは大きく違った場所になっていたでしょう。
FMEAを実施する必要はありますか?
釘の不足と王国の関係性、FMEAの不足とデス・スターの関係性は、一つのシンプルな真実を示しています。石油リグであれ、厨房機器であれ、デス・スターであれ、新製品を設計する際には設計の早い段階でFMEAを実施することで将来の多くの問題を回避できます。
参照
Lucas, George. Star Wars, Episode IV: A New Hope. New York: Del Rey, 1976. http://www.amazon.com/Star-Wars-Episode-IV-Hope/dp/0345341465/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1358180992&sr=8-2&keywords=Star+Wars%2C+Episode+IV%3A+A+New+Hope
Opie, Iona and Opie, Peter. ed. Oxford Dictionary of Nursery Rhymes. Oxford, 1951, 324. Quoted in Lowe, E.J. “For Want of a Nail.” Analysis 40 (January 1980), 50-52. http://www.jstor.org/stable/3327327
Rayfield, Jillian. “White House Rejects 'Death Star' Petition.” Salon, January 13, 2013. Accessed 1anuary 14, 2013 from http://www.salon.com/2013/01/13/white_house_rejects_death_star_petition/
Smith, Bill. ed. Star Wars: Death Star Technical Engage. Honesdale, PA: West End Games, 1991. http://www.amazon.com/Star-Wars-Death-Technical-Companion/dp/0874311209/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1358181033&sr=1-1&keywords=Star+Wars%3A+Death+Star+Technical+Companion.