結果を望ましくないとお客様が考えるケースがよく見られます。W. Edwards Demingの著書「Out of the Crisis(危機からの脱出)」(1982–1986) にはさまざまなエピソードがあり、以下の文も含まれています。
「自動車製造会社の特定のスタッフの業務は、月次売上予測を行うことである。担当者は多種多様な情報を考慮に入れる。実際の売上高と比較すると、予測が多い月もあれば、少ない月もある。翌月の手順は、この比較に基づいて方法を上下に調整することだった。お気付きの読者もいるであろうが、この担当者が行っていた作業では、この方法の改善の余地はない」(331~332ページ)
販売数でも、診療所の待ち時間でも、銅のインゴットの重量でも、当社のお客様は、望ましくない結果を是正したいと考えます。ですが、問題が特殊な事象から発生したのか、問題が製造工程に内在するものなのかを理解せずに是正しようとしても、事態を悪化させることがあります。管理図を見ることで、以下の方法のどちらを用いて望ましくない結果に対処すべきかがわかります。
管理図は、システムが管理内かを判断します。システムが管理内の場合、測定対象の広がりと中心は予測可能です。 「予測可能」と「良好」を混同してはいけません。でも、システムが予測可能だとわかると、システムを良好にするにはどんな変化が必要なのかを知ることができるのです。システムが管理内の場合、図の変動の原因は共通です(管理図の使用は、測定値が信頼できることを前提としています。測定システム分析をご存じない方は、測定システム分析についてをご覧ください)。
簡単な例を見てみましょう。以下のデータは、コールセンターにかかってきた電話に対する未応答の割合です。比率は、時系列でプロットされています。
データを見て、最高点が12%超であることに気付く人がいるかもしれません。気付いた方は、かかってきた電話の8分の1が未応答とは容認できないことであり、この高い割合の原因を突き止めなければならないと言うでしょう。ここで原因を探っても、うまくいきません。
代わりに、管理図を用いてこのデータを見てみましょう。 以下の手順で、図を作成します。
生成された結果の図には、サブグループの以下の比率が示されています。
管理図には、すべてのポイントが管理限界線内に入っていることが示されています。このシステムで起こっていることのすべてが予測可能です。予測可能なシステムでは、1つのポイントが高いまたは低い理由を調べてもわかることはほとんどないでしょう。ここでは、未応答着信の問題の原因は共通です。工程に常に影響を与えている要因に対処しない限り、改善に効果は出ないでしょう。
別の例を見てみましょう。以下のデータは、カムシャフト5個のサブグループの平均長さです。カムシャフトは3台の異なる機械で製造されています。折れ線グラフの平均は以下のとおりです。
最も目立つポイントは、機械3の高い値2つです。このポイントの調査は億劫かもしれませんが、管理図からさらに多くの情報を得ることができます。 以下の手順で、図を作成します。
ここでは、機械3と機械1の図を見ます。機械3では、予想どおり、2つの高いポイントが上方管理限界線を超えています。このポイントは管理外であるため、特殊な原因がこのサブグループに影響を与えた可能性があります。戻ってこのサブグループの事象を調べ、再発防止に取り組むことができます。調べることで、全体的な工程がより予測可能になるはずです。
折れ線グラフでは、機械1も管理外だと気付くのは難しいことでした。
機械1では、サブグループ8は下方管理限界線を下回っています。機械3のサブグループ9の値はそれよりも低くなっています。ですが、機械3の変動は機械1よりも大きいため、おそらく特殊な原因で、このポイントは管理内でした。機械1の特殊な原因も調べて是正する必要があります。機械1または3で全体的な工程の改善を開始する前に、工程が予測可能であることを確認する必要があります。機械が予測不可能な場合、変化が工程の変更によるものなのか、工程で予期せぬことが起こっているのかがわかりません。
管理図は、工程が管理内かを示します。工程が管理外である場合は、工程に断続的に影響を与える特殊な原因を是正する必要があります。 この特殊な原因を是正すれば、工程は管理内になり、予測どおりに稼働するはずです。 工程が管理内になって初めて、工程全体に変更を加えることができ、変化があれば、工程に内在する予測不可能性ではなく、自分が加えた変更によるものだとわかります。 工程を是正する必要があるかどうか、または工程を改善できるかどうかを知りたい場合は、管理図が必要です。