企業の研究開発(R&D)チームには、科学者やエンジニアから製品マネージャーや市場調査担当者に至るまで、さまざまな人がいます。その過程では、研究開発チーム内の部門横断的な協力に加え、製造部門など、製品が市場に出るまでのステップで役割を果たす他の部門にも大きく依存しています。研究開発チームはイノベーションの原動力であり、組織内の進歩を促進し、未来を方向付けます。研究開発チームが直面する多くの課題の中で、問題解決の鍵はデータの中にあります。R&D内の複雑さを分解し、Minitabのデータ分析がこれらの複雑さをどのように管理可能にするかを見てみましょう。
研究フェーズ
研究フェーズは、革新的なアイデアが考案され、テストされる研究開発プロセスの基本的な柱です。これらの取り組みを確実に成功させるために、研究者はデータ分析と統計に依存しながら課題を乗り越え、研究開発の過程を進めていきます。
アイデアが市場に出る前に、研究者は顧客の求めるものを測定可能な製品機能に落とし込むことから始めます。市場調査からの洞察を活用して製品開発の方向性を決めるのは、この段階です。これは、R&Dが、市場で成功するために満たす必要があるニーズを判断するうえで役立ちます。
Minitab Statistical Softwareを使用した例を見て、データ分析を使用して製品研究を検証する方法をよりよく理解しましょう。研究開発チームは、新しい超音波画像診断システムの開発を目指しています。この新しい設計の2つの重点は、携帯性と画質です。機械設計の間でユーザーの好みに有意な差があるかどうかを判断したいと考えています。
設計エンジニアとソフトウェアエンジニアは、超音波システムのさまざまな属性について、医療専門家のサンプルの好みを分析するために、2群比率検定を使用できます。たとえば、参加者に対し、画像の解像度は高いが携帯性は低いシステムと、その逆のシステムのいずれかを選択するよう求めるシナリオを提示できます。2群比率検定は、回答を分析することで、2つの設計オプションの間の選好に統計的に有意な差があるかどうかを判断するうえで役立ちます。この分析は、以後の開発のためにどの設計方向を優先すべきかについて、貴重な洞察を提供できます。
この最初の市場調査テストの後、R&Dは顧客のニーズを理解していると確信できますが、さらなる課題は製品の実現可能性です。つまり、既存の技術を使用して、顧客のニーズに合った基準で製品を設計・構築することは可能なのかということです。
製品の実現可能性は、多くの理由から重要です。調査段階で適切に実施すれば、エンジニアは潜在的なリスクと課題を見つけてリソースを適切に配分し、時間を節約し、コストを削減できます。これは、ステークホルダーに前進する自信を与えるために、製品の実行可能性を示すものです。
超音波の例に戻ると、ここでは実験計画(DOE)を実施して、複数の異なる要因に応じてデバイスの性能を評価できるようにします。最初の調査から、携帯性と画像の解像度は、他の要因を考慮する際に留意すべき重要な要素であることが分かっています。
超音波装置に対する異なる材料の影響を包括的に調査するために、研究開発チームは完全な要因設計を採用しました。このアプローチでは、材料(アルミニウムとプラスチック)、壁厚(2つのレベル:薄いものと厚いもの)、補強リブの有無という、3つの主要な要因の考えられるすべての組み合わせを体系的に評価しました。完全な要因設計は、これらの組み合わせをテストすることで、これらの要因が、個別的にも相互作用においても、デバイスのパフォーマンスにどのように影響するかに関する完全な全体像を提供します。この徹底的な調査により、チームは設計スペースを深く理解し、最終的に、携帯性、強度、安全性、精度の厳しい要件を満たす最適な要因の組み合わせを特定できるようになります。
これらのさまざまなステップを通じて、Minitabは、製品の開発過程をさらに進める前に、研究者が作業の効果を最大化しコストを削減することを可能にしました。Minitabは、研究者がデータを分析し、仮説をテストし、プロセスを最適化できるようにすることで、テストの初期段階で研究開発チームの前進に貢献します。
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開発フェーズ
開発フェーズは、研究成果を有形の製品とプロセスに落とし込んでいく上で重要です。このフェーズには、設計、テスト、手直しの厳格なプロセスが含まれます。製品の品質、信頼性、効率を確保するため、開発チームはデータ駆動型の洞察に依存します。Minitabは、エンジニアの作業全体をサポートするのに必要な、包括的なツールスイートを提供します。
開発者は、提案された設計が求める結果をもたらすかどうかを確認し、検証しようとしています。開発フェーズでは、設計仕様と製造プロセスを確定させることに焦点が移ります。研究者がR&Dチームに提供したものを基に、開発担当のエンジニアには、製品を完成させるために必要な基盤があります。
先ほどの超音波画像診断システムの話を続けると、開発者は以下の質問に答えねばなりません。
「システムが特定の仕様内で確実に結果を出すようにするには、どうすればよいか?」
そして
「製品が発売された後、期待通りに機能することを確信できるか?」
です。
能力分析
エンジニアは、超音波画像診断システムの製造プロセスの能力を評価するために、MinitabのCapability Analysisツールを使用できます。画像解像度、感度、精度などの主要な性能特性の変動を、複数の生産工程で分析できます。工程出力を事前に定義された仕様(最小許容解像度、最大許容誤差など)と比較することで、エンジニアは、工程が必要な性能基準を満たすシステムを一貫して生産できるかどうかを判断できます。
たとえば、分析によりプロセスの能力なさを明らかした後、エンジニアはMinitabを使用して、ばらつきの根本原因を特定できます。これには、工程データを分析して、ばらつきの原因となっている特定のステップまたは機械を特定することが含まれる場合があります。根本原因の特定後、エンジニアは機械設定の調整、オペレーターのトレーニングの改善、製造プロセスの変更などの是正措置を講じることができます。工程能力データを継続的に監視および分析することで、エンジニアは超音波画像診断システムが医療用途に必要な高い基準を一貫して満たすことを保証できます。
信頼性分析
超音波画像診断システムの長期的な信頼性を確保するため、エンジニアはMinitabのReliability Analysisツールを利用できます。トランスデューサーやバッテリーなどの試作システムやコンポーネントで寿命データ分析を実施し、予想寿命を推定して故障率を予測できます。
たとえば、エンジニアはWeibull分析を使用して、バッテリーの故障動作をモデル化できます。バッテリーがより高温や高電圧に晒される加速寿命試験から得られるデータを分析することで、通常の動作条件下におけるバッテリーの寿命を予測できます。この情報は、保証期間の決定、メンテナンススケジュールの計画、顧客満足度の確保にとって不可欠です。
さらに、信頼性分析は、設計の潜在的な弱点を特定するうえでも役立ちます。試作システムの故障モードを分析することで、エンジニアは改善すべき領域を特定し、設計変更を実施して超音波画像診断システムの全体的な信頼性と耐久性を高めることができます。
R&Dを行っていくことは、学習と改善の繰り返しです。研究は新しい知識の創出と未知の領域を探求することに重点を置く一方、開発は、これらの発見を市場の可能性へと変えていきします。互いの目的を明確に理解し、Minitabからの洞察を活用することで、組織は、研究努力が戦略的に開発目標と整合性があることを確認し、イノベーションへの投資収益を最大化できるのです。