売上債権回転日数 (DSO)は、多くの場合、最高財務責任者(CFO)や財務部門が監視する重要なキャッシュフローの指標です。売上債権回転日数は、企業が売上の支払いを受け取るまでに要する平均日数を表すものです。DSO数値が高い場合、それは、企業における支払いの受け取りに遅れが生じていることを示しています。企業が資金を回収するよりも速く支出していると、キャッシュフローの問題が発生しかねません。一般に、最も望ましいのは、DSOを減らし可能な限り低い数値を達成することです。
私の経験では、CFOと財務部門は、歴史的背景と経験に基づき、DSOの適切なレベルはどの位かについての「感覚」を持っています。
多くの場合、DSOは月、四半期、または年ベースで算出されます。DSOは、特定期間の売掛金合計を同じ期間の売上合計で割ることによって計算されます。次に、この結果に当該期間の日数が乗算されます (つまり、月次で計算される場合は30日、四半期ごとに計算される場合は90日のようになります)。
通常、ほとんどの財務部門には、スプレッドシート上で、または自動化されたレポートやダッシュボードで計算されたDSOがあります。 特定期間のDSOが異常だと思われない限り、分析はそこで終了します。以下で明らかなように、数値を見ても、スプレッドシートで作成したグラフを見ても、あまり役立つ情報は得られません。
私は実際の上場企業から過去のデータをいくつか取得し、四半期ベースで報告されたDSOデータを調べました。データを見ると、DSOは57.905 ~ 70.680の範囲でした。つまり、次のDSOがその範囲から外れない限り、おそらく何の問題も指摘されないでしょう。問題は、(私の上司が言うように)その範囲を「トラックで運転できる」ので、「範囲内」にいることは基本的に無意味であるということです。
上はスプレッドシート (またはKPIダッシュボード) の典型的なビューです。傾向や外れ値を見つけることができますか?
Minitab統計ソフトウェアを使用して、全く同じデータセットを使い、時系列分析を実行することができました(分解コマンドを使用して、四半期ごとの季節性を考慮しました)。そうすることで、2 つの素晴らしい洞察が得られました。1 つは、時系列分解プロットで、DSOが改善されている傾向が明示されたことです。財務チームは、より迅速に回収するためのプロセスを積極的に導入していたか、あるいは運が良かった可能性があります。いずれにしても、傾向としてはDSOが減少していることが示されており、これは望ましいことです。
次に、以下のMinitabのデフォルトのグラフを、典型的なスプレッドシートのグラフ(状況をより鮮明に示すために編集されていますが、成功していません)と比較してください。Minitabのグラフが、スプレッドシートのグラフでは気づかない可能性がある傾向を明示していることは明らかです。
2番目の洞察は、資金回収の季節性に関する理解です。以下のグラフは、第4四半期に、この会社が他の四半期よりも大幅に早く売掛金を回収したことを明確に示しています。おそらく、チームが行っていることで、年の最初の3四半期にも適用できる何かがあるのではないでしょうか? いずれにせよ、季節性を理解することは、DSOが間違った方向に向かっていることを手遅れになる前に認識するうえで役立ちます。スプレッドシートの観点から見ると、ここでも季節性は確認できますが、12月のDSOが最も低いことを明確に示唆するだけで、最初の3 四半期に関する情報はあまりありません。
CFOはこれを判読して、季節性とDSOの傾向を直観的に理解すべきだと言って異論を挟むかもしれません。おそらく。この演習を行うことは、財務部門の認識を確認(または啓発)するだけでなく、将来の失敗の防止にも役立ちます。
財務部門は、DSOの傾向を確認することに加えて、DSOの管理図を維持する必要もあります。プロセスの監視で最も一般的に使用される管理図 は、プロセスが制御不能になり修正措置が必要な時を示します 。異なるタイプのデータやプロセスを対象とする様々なタイプの管理図がありますが、四半期のDSOは事実上四半期全体の平均であるため、季節調整されたデータによる個別の図を使用しました。
上の管理図は、観測点7(DSOが70を超えた7月~9月の四半期)が「制御不能」であったことを明示しています。傾向から分かるように、問題を軽減するためだけでなく、長期にわたる改善を図るためと思われる措置が講じられたことは明らかです。
管理図は、コンテキストも追加します。初期の段階で、上昇傾向は対処する必要がある問題を示していました。興味深いことに、この会社では、DSOが最低レベル(観察 10)になった後、再び上昇傾向を示しました。管理図は、この傾向が別のリスクを示唆しているのではなく、平均値に向かって動いていることを示しています。この新たな上昇傾向にあるネガティブな動きについて誰か(CEO、投資家、CFOなど)から質問があった場合、この管理図は、警鐘を鳴らす理由がないことを示す優れたツールとなります。
管理図とスプレッドシートで作成した管理図を、もう一度、比較してください。より多くの洞察が得られるのは、どちらですか?
財務チームは財務システムとスプレッドシートに注意を集中する傾向があるため、統計に関する不安 (ちなみに、これは現実のものです!) が前進を妨げている場合があります。分析が迅速かつ簡単であるだけでなく、Minitab Connectを使用してダッシュボード上でセットアップし自動化することも可能であることを保証します。これは他の主要な財務指標にも適用できるため、新たに得た統計知識を広く活用できます。
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