Greg Kinsey氏は、EMEA製造プラクティスを率いる、製造業アドバイザー兼エグゼクティブコンサルタントです。Kinsey氏とそのチームは、主にヨーロッパの工業企業に、デジタル変革の構想化、計画、実行の支援を行っています。企業が「デジタルツールを手段として使用して、よりスリムで、環境に優しく、俊敏で、生産的になる」お手伝いをしているのだと話します。 |
今日の世界では、革新の機会は増えていると思います。革新を推進し、また革新の一部にできるデータが豊富にあるためです。
一歩引いて革新を見ると、そこには製品革新、工程革新、ビジネスモデル革新があります。データとデータツールをこれらの製品、工程、ビジネスモデルに統合することで、20年前には夢にも思わなかった新しい方法が可能になります。私のビジョンでは、これまでのところデジタル化が世界の革新を加速させてきており、その傾向は今後も続くと思います。
革新を行なわずして、ビジネスを成長させることはできません。革新は、既存の顧客のために新しい価値を生み出し、新しい顧客を引き付けるために新しい価値を生み出すのに重要です。
ユーザー側の視点では、継続的な改善には革新が不可欠です。製品の使いかた、日常業務の行いかたなど、改善の余地のあるすべてに、革新が必要です。また、世界で多くの環境問題に直面しており、その解決には、大きな革新が必要です。
大部分の企業が、複数の要因があって、革新に苦労しています。
組織には、革新のプロセス、つまりは革新ポートフォリオを管理する方法が必要です。経営陣ができることはたくさんあるでしょう。ですが、それは意識的な決断であるべきで、革新の範囲を絞り込むことが必要だと思います。革新の経験がないマネージャーは、必要な方法と行動を学ぶことができます。
革新には裏と表があります。まず、革新とは、新しい方法で問題を解決することです。過去に問題解決で使用した既存のフレームワークに挑戦することです。
革新の最も重要な側面の1つは、「やるべき仕事」に焦点を当てることです。
この「やるべき仕事」の概念は、ハーバードビジネススクールのクレイトンM.クリステンセン教授の研究から開発されました。クリステンセン教授の研究は、仕事をどう解決できるかについて、さまざまな考えかたがあることを明らかにしました。重要なことは、革新プロジェクトを定義するときに、やるべき仕事に焦点を当てることです。
たとえば、ドリルは必要だろうか、壁に穴を開けるべきだろうか。ドリル以外に、穴を開けられるもっと良い方法はあるか。なぜ穴が必要なのか。他のソリューションはあるか。やるべき「仕事」とは何か?
やるべき仕事に焦点を当てられないと、真の革新を生み出す機会を逃してしまうかもしれません。
おそらく、私の経験上、最も重要なことは、ツールの使いやすさだと思います。
複雑なソリューションがインストールされ、その設計者は使用方法を理解しているものの、ユーザー体験がニーズに合っていなかったために対象のユーザーがそのソリューションを使うのが難しいという事例を目にしてきました。私たちの誰もが、消費者向けWebアプリや携帯電話の新しい「機能」を使用する際に毎日このことを経験しています。
仕事の要件に集中し、やるべき仕事に一致するツールを選択してください。そしてやり過ぎないでください。単純な仕事のために、過度に洗練されたツールを作成してしまうことがあります。
革新プロジェクトを成功させるには、さまざまな変数の相互作用、可能性、工程の動き、人間の行動、サプライチェーンの動き、気候の動きなどの、データを理解する必要があります。どのような革新であれ、さまざまな条件下の動きを理解し、モデル化する必要があります。
それは、最も賢い人を獲得して、それらの人を隔離し、彼らが革新を実現することを期待するという、時代遅れの考え方です。隔離革新を何年も続けて、多くのことがわかり、人が製品を使用する場で革新が起こることに気づきました。駅や工場、流通ハブに行き、そこで働く人と話す。それぞれが抱えている問題と、それをどのように解決したかを尋ねる。仕事で対処していた問題を解決するために現場が考案した強力な革新が、そこにはあります。革新は現場と協力して行われるべきである、というのが教訓です。
今日、組織の管理方法は進化し、働いている人は仕事の一環として革新を考案するだけでなく、実装して選択することに関わっています。そして、継続的改善とアイデア管理の全体的な考え方は、多くの大手企業で、日常業務との統合まで進化しました。これに基づき、革新の方法とツールが構築されています。
顧客の声に厳密に従って革新しようとすると、過去の考え方にとらわれすぎて、真の革新の機会を逃す可能性があります。必ずしも最善の方法ではありません。
協同革新には興味深い傾向が見られます。とてもクリエイティブな革新家は、必ずしもFortune 500社で働いているとは限らず、多くの場合、新興企業で働いています。たとえば、私がアドバイスしたある最高革新責任者は、新興企業との連携に焦点を絞ったインキュベーターを用意しました。これにより、新興企業の才能、働きかた、革新を生み出している文化のメリットを得ることができました。これは新興企業にもメリットになります。大企業が最初の顧客になり、参考になり、さらに大企業が顧客のために解決しようとしている現実の問題を目の当たりにできるためです。
理由1: 時に、上級管理職は、リスクの管理、「火消し」、短期KPIの提供、株主の管理にほとんどの時間を費やしているために、リスクを恐れます。立場が上の管理職になるほど、奇抜なアイデアやリスクの高いプロジェクトを多く引き受けようという意欲が低下します。すべてのアイデアに飛びついても、すべてが成功しない可能性がとても高く、コストおよびリソースの分散が発生するため、自信を持って進められる、説得力のあるものを見たがります。
理由2: リスクの管理以外に、経営陣は戦略を持っている必要があります。通常、これは5か年計画で、これをすべてが支えなくてはなりません。誰かが革新的なアイデアを思い付いても、それが戦略を支えるものでなければ、承認されません。どの戦略にも、ある程度の欠陥があるため、大変かもしれません。戦略ゆえに新しいアイデアを却下すると、革新して活用できそうな重要な変化を逃す可能性があるのです。
革新文化は、経営陣の了承と行動の変化から始まります。これには、厳格な管理システムと方法、具体的な5カ年計画を頼りにすることからの明確な転換が必要です。やるべき仕事に細かく焦点を合わせる必要があります。これには、組織内のあらゆるレベルの人、特にそれを日常業務としている人を関与させることが含まれます。革新プロジェクトを成功させるには、データからの深い洞察が必要です。現在の環境の洞察だけでなく、変化がどう影響するかという予測も必要です。革新が必ずしも明らかな領域から生まれるとは限らないということを、覚えておいてください。驚くようなところから生まれることが多いです。心を開いて、新しいことを試す、長年の仮説に疑問を投げかけるなどの余地を作ることが重要です。
Greg Kinseyのインタビューは他に2件掲載されています。
- データサイエンスを誰にでも: 予測分析の重要性の理解. データ分析は、ビジネスの仕組みを理解するために不可欠であり、予測分析は、ビジネスがどこに向かうべきかを教えてくれます。インダストリーエグゼクティブのグレッグ・キンゼイによると、適切なツールを使えば、誰でも業績を向上させ、ミスを減らす、より良い意思決定ができるようになるといいます。詳しくはこのブログをご覧ください。
- デジタル変革の成功のためにITチームとオペレーショナル・エクセレンスチームを一つに. 多くの人にとって、デジタルトランスフォーメーションとは、新しい技術を見て、"その技術で何ができるのか?"と問うことです。グレッグ・キンゼイによると、この考え方がなぜ逆行しているのかを学びましょう。