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デジタル変革の成功のためにITチームとオペレーショナル・エクセレンスチームを一つに Bringing Together IT and Operational Excellence Teams for Successful Digital Transformation

作成者: Minitab Guest Blogger|2022/04/13 12:30:00

 

 

Greg Kinsey氏は、EMEA製造プラクティスを率いる、製造業アドバイザー兼エグゼクティブコンサルタントです。Kinsey氏とそのチームは、主にヨーロッパの工業企業に、デジタル変革の構想化、計画、実行の支援を行っています。企業が「デジタルツールを手段として使用して、よりスリムで、環境に優しく、俊敏で、生産的になる」お手伝いをしているのだと話します。

Kinsey氏は主に世界の自動車、電子機器、航空宇宙、消費財の製造部門と30年以上仕事をしてきました。革新そのもの、革新が極めて重要な理由、より革新的になる方法について、お話を伺うことができました。

デジタル変革をどのように定義していますか?

多くの人にとって、デジタル変革とは、新しい技術に目を向け「この技術を使って何ができるだろうか?」と考えることです。ですが、実践においてはこの考え方は消極的です。デジタル変革は、技術よりも変革に焦点を当てるべきだと、私は考えています。目的主導型で、将来の競争力に対する明確なビジョンに向けて推進するべきです。

質問は、「何を変革したいのか?」です。運用?工程?文化?ビジネスモデル?サプライチェーン?製品?どんな形、どんな機能?デジタル変革とは、技術を適用して運用能力を新たに考案し、目標とする将来の状態を実現することです。

お客様と会うとき、よくこう聞きます。「将来の工場のビジョンを持っていますか?本当に実現したいことは何ですか?2030年に運用はどのようになっていますか?」驚くことに、リーダーが答えに詰まることは多いです。これは、オペレーショナル・エクセレンスとデジタル変革戦略を決めるものなので重要な質問です。

オペレーショナル・エクセレンスとは?

従来の考えでは、オペレーショナル・エクセレンスチームには「改善」という強い使命があり、ボトルネック、欠陥、ダウンタイムなど、日々の生産性を妨げる厄介な問題に焦点を当てます。これはもちろん不可欠なものです。ですが、オペレーショナル・エクセレンスの範囲を、新しい可能性、さらにその結果としての高い生産性まで広げる必要があります。これは、運用システムを新たに考案することです。

本質的に、オペレーショナル・エクセレンスはデジタル変革の「物」を定義し、技術はそこに到達する「方法」を定義します。オペレーショナル・エクセレンスの機能は、デジタル化がこの実行手段としてどのように役立つのかを完全に調べるものであるべきです。ほとんどのITチームは、製造拠点やサプライチェーン拠点の運用面から離れています。ITチームだけでデジタル変革の定義と実行を推進することはできません。

課題は、デジタル技術がオペレーショナル・エクセレンスを推進し、定義された目標と将来のビジョンを達成できるよう、いかに2つのチームを統合するかです。

Armstrong FlooringがMinitab Engageを使用して継続的改善プログラムとプロジェクトを管理した方法についてご覧ください。

デジタル変革では、なぜ新しい作業方法をつくるために運用モデルを新たに考案する必要があるのか?

どの産業組織にも運用モデルがあります。これは特定の方法で運用されるようにセットされ、一部の組織はそのモデルの改善のしかたについてビジョンを持っています。モデルを変革すると、まったく違う生産性を生むことができます。

一つの例として、過去30年間のリーン生産があります。リーン生産方式は根本的に異なる生産モデルであり、物理的なスペースの半分を使用し、エネルギー、材料、人間の活動、またはその他の何が工程に入るかにかかわらず、投入の半分を必要とします。有名なトヨタ生産方式からインスピレーションを得ているリーンモデルは、根本的に新しい作業方法で、労働力を発展させる方法です。

別の例として、顧客の要件の急速な変化があります。市場の需要は、よりカスタマイズされた製品に移行しているかもしれません。大量カスタマイズに移行するには、運用モデルを新たに考案する必要があります。これは簡単ではありません。サプライヤー関連の制約を受ける可能性が高いためです。同時に、現地に近い、持続可能な供給基盤に変革しているかもしれません。また、生産モデルは大量の稼働用に最適化されているかもしれません。これゆえに、運用モデルの変化は非常に複雑になり得るわけです。通常、運用に影響を及ぼす経済的、政治的、社会的、市場的制約の複雑な網があります。

こういった例からわかるように、デジタル変革は単独で実行できません。運用モデルを新たに考案するには、デジタル戦略と全体的な戦略を組み合わせる必要があります。

組織はどうITチームとオペレーショナル・エクセレンスチームをまとめれば良いのか?

上層部から調整していく必要があります。私の経験では、企業がリーダーチームの調整に時間をかけないと、後で痛い目に遭います。最初のステップは、エンドツーエンドのバリューストリームを変革するビジョンに経営幹部からの同意を得ることです。

バリューストリームには、価値の創造、人の働き、材料の動き、工程の動き、ITシステムの動き、経営部の管理の方法が含まれます。リーダーチームは、健全な議論を行いながら、調整アプローチを作成する必要があります。

優先項目は何か?どこから開始するか?重要なユースケースは何か?短期はどれか?中期はどれか?長期はどれか?成功の状態とはどのようなものか?得たい成果は何か?運用KPIの観点からはどういう意味になるか?

最初にこれを理解しておくことが重要です。これにより、方向性が明確になります。

2番目に重要な側面は、広い範囲からの運用代表者とともに、部門の枠を超えた作業グループを結集させることです。真の革新は、工程で働く人すなわち現場を巻き込むことで起こります。価値が作り出されるのはその場所です。製造現場の従業員は通常、デジタルユースケースとソリューションの形成に役立つアイデアと洞察を豊富に持っています。また、現場従業員がデジタルソリューションのユーザーになるため、ユーザー体験の設計において現場のニーズに対応することが重要です。

ユーザーから受け入れられることも重要です。技術を一方的に人材に強要すると、どんな優れた技術であっても、何ら意見を求められなかったために、その技術は拒否、妨害、批判されたり、多くの場合、成功が妨げられたりする可能性があります。工程全体を通して、良好なコミュニケーションが重要です。

デジタル変革が失敗するのはなぜか?

おそらく、失敗の最大の原因は、ソリューションに集中しすぎていることでしょう。人は時に、オペレーショナル・エクセレンスの実現において、ソリューションにすぐに飛びつき、解決すべき問題を深く分析せずに技術を導入しようとします。技術に固執すると、本質が見えなくなってしまいます。潜在的なユースケースに集中しなくなり、実際の問題を解決できる革新的なアプローチを探さなくなります。このことには、IT業界が過去20年にわたって製品主導型の市場参入アプローチを行ってきたことにある程度責任があると私は思います。

失敗の2つ目の原因は、上でも書きましたが、管理チーム全体の内部調整ができていないことです。

失敗の3つ目の原因も、上で書いたことです。目的が、多くの技術を導入すること、または作業方法を変革することになっていませんか?デジタル化に伴い、かなり多くの工程の再構築と組織的な変化が発生します。そして通常、管理モデル全体を更新する必要が出てきます。

MinitabのチーフマーケティングオフィサーJoshua Zableが、デジタル変革を実現するためにエンジニアリングとテクノロジーがどのように融合しているかを語ります。  

第4次産業革命はどうなるか?

2015年以降、第4次産業革命の話題が出ています。概念はちょっと曖昧ですが、多くの場合は単なるIT(情報技術)とOT(運用技術)の大規模展開です。この単純な見方には賛成できません。ちなみに、業界では、ITとOTの多用は今に始まったことではありません。1980年代に誕生したMESのように、産業用ロボット、IT、エンタープライズソフトウェアをもたらしたのは第3次産業革命でした。

これらの産業革命を詳しく見てみると、主に、仕事のやり方の根本的な変化であることがわかります。これは生産モデルの変化を意味し、労働力、組織モデル、管理方法の変革が必要です。産業の社会的および経済的モデルに革命がもたらされました。

大まかに言うと、以下のように言えます。

  • 第1次産業革命は、専門化された仕事です。職人です。

  • 第2次産業革命は、標準化された仕事、量産、テーラーイズムです。ヘンリー・フォードの概念です。

  • 第3次産業革命は、自律的な仕事の引き取り方式であり、多くの場合、一個流しとU字型セルを備えています。トヨタの概念です。

約250年で、専門化された仕事から、標準化された仕事、自律的な仕事へと移行しました。

第4次産業革命は、知識の仕事への移行になると思います。産業労働者は、物理的な仕事ではなく、知識の仕事を行って、給与を受け取るようになるでしょう。産業労働者は、知っていること、また生産性を最適化し、問題を解決し、工程を監視し、運用を管理するためにデータをまとめる方法から、価値を生み出します。すでに高度な電子機器や自動車工場で見られるように、物理的な作業のほとんどは自律型または半自律型の機械で行われるようになります。

第4次産業革命は、以前の革命と同様に、産業の経済的および社会的モデルを大きく変えるでしょう。この流れで変革する方法を考えている組織は、技術のことばかり考えてはいられません。将来の工場、運用能力、必要な人間の能力について考える必要があります。

また、知識ベースの産業労働力を活かす方法、つまり収益、地球、顧客、そして何よりも労働者自身にとってより良いあり方のビジョンを考え出すことも重要です。

予測分析をどう取り入れるか?

これは良い質問です。問題が発生する前に高い確率で問題を予測できたら素晴らしいことです。これを、予測分析と呼んでいます。誰でも、問題が発生する前に正確に予測できたらうれしいはずです。Hitachi Vantaraの私のチームは、この領域でプロジェクトを開始しました。データサイエンスを使用して、高度な特性要因モデリングを実行するものです。製造における主な3つのユースケースは、品質問題の予測、計画外ダウンタイムの予測、生産のボトルネックの予測です。

予測データがオペレーターに示されれば、その問題の発生を防ぐ方法、つまり処方的分析へとオペレーターをガイドできる可能性があります。

「予測分析は強力で、労働力の性質と働き方を根本的に変えるでしょう。」Greg Kinsey

製造は反応型だと言われており、人は常に「消火」を行い、予期せず故障したものを修理しています。デジタル変革により、予防的で管理された環境作りができるようになると思います。このような環境では、手元で起こっていることの知識が豊富です。握っている携帯電話が、日常業務を効果的に行うための主要な情報源になります。問題は、データを基に、発生前に警告されます。これにより、消火作業が減り、ストレスが減り、管理の下で自信を持てるようになります。

データ駆動型という言葉は使われすぎかもしれません。ですが、リアルタイムのデータの力を完全に活用できるようになれば、日常業務の本質が変わります。事務所に座っている経営幹部だけでなく、現場の運転手、機械オペレーター、品質管理者、メンテナンス担当者でもこれが可能になったとき、革命は起こります。現場の人がデータ駆動型の作業環境の恩恵を受けられるようになったら、そこが第4次産業革命への到達でしょう。

データをコントロールし、データドリブンな意思決定を行うために、すべてのオペレーションを可能にする準備はできていますか?